米国市場には様々な優秀なETFが存在し、実際に購入されている方が多いと思います。
米国ETFにはキャピタルゲイン(*1)を最大限に得るために高トータルリターンを狙えるS&P500のような株価指数に連動して運用されるインデックスファンドや、インカムゲイン(*2)を得るために高配当銘柄だけを集めて運用されるアクティブファンドなど数多くの特徴を持ったETFが存在します。
SNS等で「VTIは米国全体を購入しているのと同じだからその他のETFと銘柄が重複するから必要ないんじゃないか??」という意見が一定数見られます。
この記事ではこの「銘柄の重複」に関する考え方について実際に私が運用を行っている米国ETFポートフォリオ(VTI / VIG / QQQ / SPYD)を用いて解説をしていきたいと思います。
こんな方に読んでいただきたい
- VTIを中心にハイブリッド投資をされている方
- 米国ETFでポートポートフォリオを作成したい方
- 銘柄の重複に意味がないと考えている方
(*1) キャピタルゲイン:株式や債券など、保有している資産を売却することによって得られる売買差益のこと
(*2) インカムゲイン:資産を保有していることで得られる収入のこと。債券投資や預金などから生じる受取利子、信託の結果としての収益分配金、株式投資の場合の現金配当などの総称。
(*3) ポートフォリオ:金融商品の組み合わせのことで、特に具体的な運用商品の詳細な組み合わせを指します。
※この記事のデータは2020年5月30日時点のもので表についてはBloomberg, 各ETFのセクター情報については各運用会社のHPから入手したものになります。
銘柄のおさらい
それではまず各銘柄の特徴についておさらいしていきます。
「そんなの知っとるわ!」という方は目次から次の項目に飛んでいただければと思います。
VTIの特徴
それではまずVTIの特徴から見ていきましょう。
VTIの基本情報
VTIの特徴として始めに挙げられるのはやはり「銘柄数」となります。
VTIはS&P500も含めた全米の大企業、成長企業を含む中小企業約3500社に分散して投資が可能でこれだけでも分散投資ができる代物です。
また、設定年が2001年という事で「ITバブル(2002年)」や「リーマンショック(2008年)」といった大きな暴落を経験した上で成長し続けている点も挙げられます。
運用総額が大きい事にもより信託手数料も0.03%と非常にが安く一株単価も比較的安い事から非常に投資し易い銘柄と言えます。
5年間の株価の推移を見てみても現状はS&P 500に匹敵する成績を収めています(青色がVTIで赤色がVOO)
VTIのセクター比率
VTIのセクター比率をレーダーチャートで示すと下記の通りとなります。
- 大企業、中小企業(成長株)を含む全米の3500社への分散投資が可能
- S&P500(VOO)に匹敵する高いトータルリターン
VIGの特徴
VIGの特徴を見ていきます。
VIGの基本情報
VIGの特徴としてまず始めに挙げられるのが「連続増配株」で構成されている点です。VIGの組み入れ銘柄の組み入れ条件として10年以上の連続増配があり、数千ある米国株式の中からただ増配を続けているだけではなく、増配の可能性が低い銘柄は排除されています。
構成銘柄が「製造資本財」や「消費サービス」の比率が50%近くとなっており、暴落時の下げ幅が少ないことも特徴に挙げられます。
また、設定年は2006年と「リーマンショック(2008年)」を経験していると言うところも強みの一つとなります。
5年間の株価の推移を見てみても現状はS&P 500に匹敵する成績を収めています(青色がVIGで赤色がVOO)
VIGのセクター比率
VIGのセクター比率をレーダーチャートで示すと下記の通りとなります。
下記のように「資本財」セクターの割合が大きく、「一般消費財」、「生活必需品」といったセクターなどVTIの苦手分野等の補完ができています。
- 10年以上の連続増配株で構成される
- VTIの苦手部分を補うセクター分布
- S&P500(VOO)に匹敵するトータルリターン
SPYDの特徴
SPYDの特徴を見ていきましょう。
SPYDの基本情報
まずSPYDの特徴として挙げられるのが高い配当率です。現状5%越えと高い配当率を示しています。
ただし、今回の暴落により1年トータルリターンが-17.33%を記録しておりまだ暴落前の水準には程遠い状態です。
しかし、信託報酬は0.07%と割安であることと、今回の大暴落により株価が下がったことで、上昇中の相場の中でも一株単価が$30付近であることから比較的購入し易い状況にあるといえます。
ただし、SPYDの株価上昇は「不動産」セクターに頼っている側面が大きい中、組み込まれている不動産は景気敏感銘柄であることや、高配当株が基本的に非成長株の集まりであることから非成長株に偏重しているという特徴があります。
SPYDのセクター比率
SPYDのセクター比率をレーダーチャートで示すと下記の通りとなります。
特徴的なのはその他のETFでは取り扱っていない「不動産」の割合が非常に大きいことです。またその他のセクターも含めて満遍なく含まれている事も特徴の一つとなります。
- 高い配当率
- 高配当株のため非成長株に偏重
- 「不動産」セクターを有する
QQQの特徴
QQQの特徴を見ていきます。
QQQの基本情報
QQQの特徴としてまず挙げられるのがNASDAQ 100に連動した運用がされていると言う事です。NASDAQ 100は米国の中でもハイテク株(情報技術/電気通信)を中心とした中小企業やハイテク産業など主にベンチャー向けの新興市場となります。
ファンドのセクター比率も情報技術/電気通信だけで66%を占めておりハイテク株に特化したETFであると言えます。
また設定年も1999年と「ITバブル(2002年)」や「リーマンショック(2008年)」を乗り越えているところも良い特徴として挙げられます。
そして、QQQにおける最も素晴らしい点はトータルリターンの高さです。
5年トータルリターンで15.17%の成績を収めており、この間保有していた人はさぞ大きな利益を得ることができたでしょう。。。
また、コロナショック前までは「ハイテク株は暴落に弱い!」と言われていましたが、結果は全く逆。このコロナショックにおいてQQQは唯一の勝ち組と呼んでも良い成績を収めています。それが1年トータルリターンで他のETFがマイナスとなっていることに対してQQQだけが13.12%という成績を収めている事からも現れています。
2020年始めからのVOOとQQQのチャートを比較してみると下記の通りとなります。(赤がVOOで青がQQQ)
QQQは既に年初の水準まで上がってきています。
QQQのセクター比率
QQQのセクター比率をレーダーチャートで示すと下記の通りとなります。
下記のように「情報技術」、「電気通信」といった成長著しいGAFAMを含むハイテクセクターの割合が大きいのが特徴です。
- NASDAQ 100に連動して運用される
- ハイテクに特化したETF
- 圧倒的なトータルリターン
組み合わせの考え方
それでは実際に私が運用している下記のポートフォリオについて考え方を解説していきます。
VTI / VIG / SPYDの組み合わせ 長期投資ポートフォリオ
それでは、ハイブリッド投資におけるVTIとその他のETFとの組み合わせについて私が長期目線で運用しているポートフォリオ(VTI / VIG / SPYD)を用いて解説をしていきます。
VTI / VIG/ SPYDの銘柄分布
下記のベン図は各ETFの銘柄の分布を視覚的に表現したものですが、VTIがVIG、SPYDの構成銘柄をほとんど含んでいることがわかります。
またVIG/SPYDの銘柄の重複がほとんどないということろがポイントです。
*ベン図はハルさん(Twitterアカウント:@haru_tachibana8)に作成いただきました。
https://twitter.com/haru_tachibana8/status/1267015742702022656?s=20
ここで、VTIで他の銘柄を含んでいるのであればVTIだけで良いのではないか?と思われた方も多いのではないかと思います。
これに関しては個人的には正しい見解と思います。VTIは実際に単独でも立派なポートフォリオとして成り立っています。
ここからは「組み合わせることの効果」と「重複によるデメリット」も含めて解説を行っていきたいと思います。
VTIにVIG/SPYDを追加する理由
ここからは、私がVTIに加えてVIG/SPYDを追加して投資している理由について説明していきます。
前述の通り、
VTIは「中小企業(成長株)を含む」
VIGは「VTIの苦手セクターを補うセクター分布」
SPYDは「高配当株(非成長株)の集まり」
という特徴を持っています。
VTIは確かに米国市場全体に投資している事には間違いないのですが「時価荷重型」のインデックスファンドであることからセクター毎に満遍なくという意味では偏りはできてしまっているのが事実です。
またSPYDについては高配当株の集まりという特徴があることから「非成長株」で構成されているという偏りがあります。
それぞれのETFの欠点をそれぞれで補う事でポートフォリオ全体の安定性を増す効果を期待しています。
相互の補完効果(VTI/VIG/SPYD)
- VTIは「中小企業(成長株)を含む」
⇨SPYDの欠点(非成長株の偏り)を補っている。 - VIGは「VTIの苦手セクターを補うセクター分布」
⇨VTIの欠点(セクター分布の偏り)を補っている。 - SPYDは「高配当株(非成長株)の集まり」
⇨高配当を得つつ、「不動産」セクターを有する
VTI / VIG / SPYDのセクター分布
セクター分布をレーダーチャートで示しながらさらに解説を行っていきます。
まず各ETF毎のレーダーチャートを確認していきます。
VTI / VIG / SPYDのセクター分布
前述のように、VTIは「時価過重型」のインデックスファンドであるため、時価総額の高い銘柄の割合が大きくなり、時価総額の低い銘柄の割合が低くなります。
そのため、VIGやSPYDを取り入れることで、VTIの中で比率の低い『連続増配』や『高配当』といった特徴を持ったセクターや銘柄を補強する事ができます。
前述した通り、VIG/SPYDの銘柄の重複がないためそれぞれの特徴をそのままVTIに強化することが可能となっています。
ですので、銘柄の重複については私はデメリットとしては考えておらずむしろ強化されていると捉えています。
実際にそれぞれのETFを1:1:1の資産比率で組み合わせた場合のレーダーチャートを見ていきましょう。
VTI+VIG+SPYDのセクター分布
この組み合わせは各セクターに均等に分布しており、景気循環(セクターローテーション)に対してもバラツキの少ない分布を示しています。
長期投資を考えた際に「長期的なトータルリターン」と「インカムゲインの源泉を構築する」という私の投資目的に対しての私にとっての最適解の一つと考えています。
VTI / VIG / SPYD / QQQの組み合わせ 中期投資ポートフォリオ
それでは次にハイブリッド投資におけるVTIとその他のETFとの組み合わせについて私が中期目線で運用しているポートフォリオ(VTI / VIG / SPYD / QQQ)を用いて解説をしていきます。
VIG / SPYD / QQQの銘柄分布
まずは銘柄の分布を見ていきます。下記のベン図は各ETFの銘柄の分布を視覚的に表現したものですが、VIG/SPYD/QQQに関してはの構成銘柄の重複は殆どありません。
*ベン図はハルさん(Twitterアカウント:@haru_tachibana8)に作成いただきました。
QQQを追加する理由
QQQを追加した目的は資産形成のスピードをあげるためですが、その理由は2つあります。
一つめは「ハイテクセクターの成長を享受できる」こと。
二つ目は「効率良くハイテクセクターの強化を行うことができる」こと。
QQQ/SPYD/VIGには銘柄の重複がないことから、ハイテクセクターの強化を効率的に行うことが出来ると考えています。
- VTIは「中小企業(成長株)を含む」
⇨SPYDの欠点(非成長株の偏り)を補っている。 - VIGは「VTIの苦手セクターを補うセクター分布」
⇨VTIの欠点(セクター分布の偏り)を補っている。 - SPYDは「高配当株(非成長株)の集まり」
⇨高配当を得つつ、「不動産」セクターを有する - QQQは「ハイテクセクターに特化している」
⇨中期的な資産形成のスピードアップ
VTI / VIG / SPYD / QQQのセクター分布
VTI / VIG / SPYD / QQQのセクター分布
実際にそれぞれのETFを1:1:1:1の資産比率で組み合わせた場合のレーダーチャートを見ていきましょう。
VTI+VIG+SPYD+QQQのセクター分布
VTI/VIG/SPYDのバランスを取れた長期投資ポートフォリオにハイテクセクターを追加した中期目線での資産形成のスピードをあげるためのポートフォリオが完成しました。
長期投資長期的な資産形成という基盤は変えず中期的に資産形成のスピードを加速させることができるポートフォリオの最適解の一つと考えています。
まとめ
この記事では米国ETFで銘柄を重複させることに意味があるか?について私のポートフォリオを例に私の見解をまとめさせていただきました。
このポートフォリオやアセットアロケーションの考え方については私の投資投資目標や投資目的にそって考えた結果であり、全ての方に当てはまるものではないと考えています。
ですが、米国ETFでのポートフォリオの構築に関する考え方の一つとして参考にしていただければと思います。
米国には様々な特徴を持った優良なETFが多数存在します。各々のETF単体でも十分に分散が取れているものも多数存在しますが、組み合わせる事でさらにセクター分散の効いたポートフォリオを作成する事ができます。
皆さんも保有している銘柄に対して銘柄の追加の検討をしてみてはいかがでしょうか?もしかしたらあなたにぴったりな組み合わせが見つかるかもしれません。
最後に…
この記事は我が家の全体の資産に対して「生活防衛資金」、「余剰資金」、「投資余裕資金」を確保した上での投資計画として作成しております。投資に対してリスクをとりすぎないという前提は変えておりません。
投資はやはり自己責任になりますので、様々な情報に対して自分で納得した上で行動する前提で臨む姿勢が必要であると思います。(上手くいかなかった時に誰かのせいにしてもお金が戻ってくることはありませんので。。。)
金融リテラシーをあげて豊かな人生を歩んでいきましょう!!
投資はあくまでも自己責任!
自分自身が納得した上で行動を!