米国市場には様々な優秀なETFが存在し、実際に購入されている方が多いと思います。
米国ETFにはキャピタルゲイン(*1)を最大限に得るために高トータルリターンを狙えるS&P500のような株価指数に連動して運用されるインデックスファンドや、インカムゲイン(*2)を得るために高配当銘柄だけを集めて運用されるアクティブファンドなど数多くの特徴を持ったETFが存在します。
投資を行う上での目標に対して投資目的を決定して数多くの銘柄から自分にあった物を選ぶ事になりますが、
『どのような銘柄を選べば良いか分からない』、『ポートフォリオ(*3)を作れと言われてもどのように考えれば良いのか分からない』
など悩みを持たれている方がいらっしゃると思います。
この記事では米国ETFを用いたインデックス投資での資産運用を考えられている方に対して「ポートフォリオの作成方法」の解説を行っていきます。
こんな方に読んでいただきたい
- 米国ETFでインデックス投資を行いたい
- 米国ETFでポートポートフォリオを作成したい
- でもどの銘柄を選べば良いか分からない
(*1) キャピタルゲイン:株式や債券など、保有している資産を売却することによって得られる売買差益のこと
(*2) インカムゲイン:資産を保有していることで得られる収入のこと。債券投資や預金などから生じる受取利子、信託の結果としての収益分配金、株式投資の場合の現金配当などの総称。
(*3) ポートフォリオ:金融商品の組み合わせのことで、特に具体的な運用商品の詳細な組み合わせを指します。
なお、この記事の中に出てくるグラフや表のデータは2020/4/24時点のものとなります。
目次
投資目的を考えよう
米国ETFに関わらず、本格的に金融商品を購入する際には投資目的を明確にすることが必要であると考えています。ここが非常に重要であり投資目的によって何を購入するのかが変わります。
例えば
- 「老後の資金を作るためにある時点までに長期的なキャピタルゲインを得て資産形成したい」
⇨株価指数に連動したインデックスファンドを購入 - 「老後に定期的なインカムゲインを得るために今から源泉を育てておきたい」
⇨高配銘柄を集めた高配当アクティブファンドを購入
「投資目的を決めておくという事」が非常に重要になるわけです。
また、投資目的によって信じるものも変わってきます。
米国ETFでインデックス投資をする場合は「資本主義経済と米国の継続的な成長を信じる!」事ができなければギャンブルをしているのと何も変わりません。
「その商品を購入し資産運用することに対して自分自身が信じられるか?」という事を本格的に投資を行う前にはしっかりと考える事が必要です。
また、その商品のリスクについて理解し「最悪の場合に自分たちが耐えられるのか?」と自問した際に「問題ない」と言い切れるのか?というところも重要となります。
仮に誰かの勧めで購入していた株価が暴落した時にその誰かが損失を補填してくれるような事はなく、儲かっても損をしても全て自己責任であるということを忘れてはいけません。
- 本格的に投資を始める際にはまず「投資目的を定める」こと
- 自分が選ぶ投資手法を信じられるか自問すること
- 投資する商品のリスクを理解し最悪の場合を想定し耐えられるか自問すること
我が家の投資目的の設定の方法については下記の記事で解説していますので、興味のある方は参照してください!
投資スタイルの決定
自分の投資目的が設定できたところでそれにあった投資スタイルを確認していきます。投資目的と投資スタイルが合っていないと自分が思い描いた結果が出ない可能性がありますので、ここも非常に重要な工程となります。
それでは投資スタイルの種類について解説していきます。
なお、この記事では長期的な資産形成というのを前提に置いて解説しておりますので、長期目線の投資スタイルについてのみ解説を行っていきます。
投資スタイルの種類と決定
長期目線の投資スタイルでよく候補に上がるのが「インデックス投資」と「高配当株投資」の2つとなります。この2つに関してはどちらが良いか??ということでよく議論になりますが、良い悪いという議論にあまり意味はないと個人的に思っています。
どちらを選択するかはあくまでも個人の好みや投資目的次第で優劣があるわけではない、そう考えます。
少し話がそれましたが、米国ETFを用いた長期投資における投資スタイルには大きく分けて下記の3種類があると考えており、それぞれの特徴は下記の通りです。
- 「インデックス投資」
⇨株価指数に連動したインデックスファンドに投資する手法
- 「高配当株投資」
⇨高配銘柄を集めた高配当アクティブファンドに投資する手法
- 「ハイブリッド投資」
⇨インデックス投資と高配当株投資を組み合わせた投資手法
3つ目に聞きなれない「ハイブリッド投資」という記載がありますが、これは私が勝手に命名しました。意味合いとしては「インデックス投資」と「高配当株投資」を組み合わせた投資スタイルをさします。
長期的にキャピタルゲインは得つつ、インカムゲインも合わせて享受する目的の方にはこちらの投資スタイルも選択肢に入ってくると思います。
ただしこの投資スタイルについては「インデックスファンド」と「高配当株式を運用するアクティブファンド」の最低2種類以上のファンドを購入していく必要があり、投資額に余裕がある方でないと両方の旨味を引き出せないという懸念があります。
また、インデックス投資と高配当株投資は投資に対する考え方が異なるため、必要とされる投資に関する知識も片方の手法だけを行うのに比べて多くなります。
ですので、基本的には「インデックス投資」、「高配当株投資」のどちらか一方を選択する方が良いと考えます。
投資スタイルの難易度は難しい方から下記の順番であると考えています。
- ハイブリッド投資 (かなり難しい)
- 高配当株投資 (難しい)
- インデックス投資 (比較的簡単)
特に初心者の方は「インデックス投資」を選ぶのが無難ではないかと思います。
投資スタイル
- 「インデックス投資」
⇨株価指数に連動したインデックスファンドに投資する手法 - 「高配当株投資」
⇨高配銘柄を集めた高配当アクティブファンドに投資する手法 - 「ハイブリッド投資」
⇨インデックス投資と高配当株投資を組み合わせた投資手法
投資手法の難易度
- ハイブリッド投資 (かなり難しい)
- 高配当株投資 (難しい)
- インデックス投資 (比較的簡単)
初心者は「インデックス投資」一択!
米国ETFの紹介
投資スタイルが決まったところでポートフォリオを作成するにあたって銘柄の選定を行っていきます。
まずはじめに米国ETFの銘柄を紹介していきます。
インデックス投資向け 米国株ETF
まずはインデックス投資に向いているETF銘柄(VOO、VTI、VIG、QQQ)を紹介していきます。
基本情報
どのファンドも基本的100以上の銘柄に投資しており分散はできています。信託報酬も0.03%〜0.20%と非常に安くなっており手数料が安いのも魅力です。
セクター比率の比較
続いてセクター比率のグラフを並べて確認していきます。
このグラフではそれぞれの銘柄がどのセクターに大きな割合を占めているのか??という事を理解することができます。
これらの銘柄の詳細については下記の記事で詳しく解説していますので、興味のある方は参照してください。
自分ポートフォリオの作成

それでは米国ETFでポートフォリオを作成していきます。
前述の通り米国ETFには様々な種類の銘柄があり、それぞれ特徴を持っています。
中には単独で銘柄もセクターも分散できているものもありますし、他の銘柄と組み合わせる事で分散効果を得るべきものもあります。
最後には自分で判断して決めることになりますが、ポートフォリオの組み合わせ例を何点か紹介していきます。
単独運用
インデックス投資(キャピタルゲイン狙い)で投資を行っていく銘柄を下記の中から選んでいきます。

VOO/VTI
VOO/VTIに関しては米国株の中の成長セクターを含んでいる上、既に銘柄とセクターの分散が元々できていますし、単独での運用でも耐え得ると考えます。
VOOを選ぶか?それともVTIを選ぶか?についてはまさに個人の好みの領域であり、銘柄の分散があったほうが良い場合はVTI、確固たる実績を持ったS&P500の成長を信じるのであればVOOといったところですので、どちらを選んでも問題ないと思います。
VIG
VIGについては構成銘柄がディフェンシブなものが多いですが、セクターの分散はされており、S&P500に匹敵するトータルリターンが期待できるため、これも単独での運用でも耐え得ると考えます。
QQQ??
QQQに関してはハイテクセクター(情報技術、電気通信)にセクターが偏っており、ハイテクセクターの成長を信じられる方は単独での運用も検討の余地があります。しかし少し偏り気味だと感じる方はその他の銘柄と組み合わせてセクター比率の平準化を行うことをオススメします。
QQQにかかわらずどの銘柄も特徴の異なる銘柄と組み合わせる事でセクター分散を行い、リスクの低減が可能となります。
- VOO/VTI
どちらかというと成長セクター中心。
単独での運用でも問題なし。 - VIG
どちらかというとディフェンシブセクター中心。
単独での運用でも問題なし。 - QQQ
ハイテクセクター中心。
基本的に単独での運用はオススメしない。
どの銘柄も組み合わせることでさらに分散が効いたポートフォリオに変身!
ただし、注意しないといけないのがせっかく持っている各々のETFの特徴を打ち消してしまう側面がある点と、銘柄を増やすということはそれだけ入金力が必要となる点については理解しておく必要があります。
組み合わせ
それでは実際に組み合わせ例を紹介していきます。ここでは視覚的にわかりやすくするためにセクター分布のレーダーチャートを用いて説明をしていきます。
VOO + VIG
VOOとVIGのセクター比率の分布は下記の通りです。
VOOは右上の成長が見込まれる「情報技術」に集中、VIGは右下のディフェンシブな「消費サービス」、「資本財」に集中。特徴が別れています。まさに攻撃と守備というイメージ。

これを保有額を1:1ので組み合わせた場合、下記のようになります。
お互いの弱い部分を補い合って成長も享受しつつ守備を固めることが可能となります。

VTI + VIG
VTIとVIGのセクター比率の分布は下記の通り。
VTIはVOO同様、右上の成長が見込まれる「情報技術」に集中していることに加えて「金融」も大きな割合を占めていることが特徴です。VIGは右下のディフェンシブな「消費サービス」、「資本財」に集中。特徴が分かれています。

これを保有額を1:1ので組み合わせた場合、下記のようになります。
お互いの弱い部分を補い合って成長も享受しつつ守備を固めることが可能となります。

VOO/VTIとVIGの組み合わせはトータルリターンを確保しつつかなりバランスのとれた組み合わせと言えると考えます。
QQQ + VIG
さて、QQQに関してですが、この銘柄については考え方によって非常に左右されます。下記の通りQQQはナスダック100に連動して運用されることから「情報技術」にもの凄く集中して投資することになり、ハイテク分野の成長をそのまま受けることができます。これに対して少しでも分散を効かせておきたい場合はやはりVIGと組み合わせる形となると思います。

これを保有額を1:1ので組み合わせた場合、下記のようになります。
これで成長分野の利益を享受しつつ分散を効かせたポートフォリオが出来上がります。

もう少し分散を効かせたい場合は1:1の割合を変化させることで分散効果の調整を行ったり、その他個別のセクターに特化したETFを組み合わせるなど、自分に合った割合を探すのも解決策の一つとなると思います。
各セクターに均等に平準化されている(10角形に近い)ことが分散という側面だけだと良いということになりますが、必ずしも全てのセクターに分散されている必要はないと考えています。
セクターの中でも時価総額が全く異なるセクターもありますので、そこまで気にしすぎるのもよくないですし、せっかくの特徴を消すことにもなりますので、セクターを集中させすぎないようにするための目安として使用していただければ良いと思います。
※S&P 500 ヒートマップ
時価総額の大きいセクターは面積が大きく小さいセクターは面積が小さい。

- VOO/VTI + VIG
「ハイテク」+「ディフェンシブ」
バランスの良いポートフォリオと言える - QQQ + VIG
「ハイテク」強め + 「ディフェンシブ」
QQQの強みをどれだけ残すかがポイント
★組み合わせ時のポイント★
1、さらにセクターETFなどを組み合わせることで分散効果を増幅することが可能
2、全ての偏りをなくす必要はない。混ぜすぎて特徴を失うことも
3、セクターが集中し過ぎていないかの確認は必要
各ETF同士を1:1で組み合わせた場合の一覧表を作成しておりますので下記のリンクからダウンロードしてPDFを参照できますのでよろしければ参考にご覧ください。
- URL
https://firestorage.jp/download/317ffc758df47306118c290a390323df9329c776 - ダウンロードパスワード
2ee5916u
ダウンロード有効期限:2020/05/17 AM 10:20
なお、Twitterで貼り付けた画像のSPYD/HDVの画像の内容がVYM/SPYDの情報と被っておりましたので、修正しております。ここでお詫びさせていただきます。
米国ETFの組み合わせチャート作ってみました。$VOO $VTI $VIG $QQQ $VYM $SPYD $HDV
*2020年4月24日時点のデータで作成…欲しい方いらっしゃいますか?? pic.twitter.com/9N4Wsm9gnI
— アラフォー会社員 (@22ken_f22) May 9, 2020
まとめ
この記事ではインデックス投資を米国ETFを用いて行う場合の自分ポートフォリオを作成する方法について解説してきました。
米国ETFの中にはすでに銘柄もセクターもある程度分散されているものもあるため、1銘柄のみでの資産運用が可能なものも存在しますが、ポートフォリオの分散効果を高めるために特徴の異なる銘柄を合わせることでリスクを低減することが可能です。
これから米国ETFでインデックス投資を始めようと考えている方はポートフォリオを作成する際の参考になればと思います。
また、今回ご紹介した他にも魅力的なETFが米国市場には上場されていますので、既に米国ETFでインデックス投資を行なっている方もこの機会に自分のポートフォリオのリスクの再確認や他のETFの導入の要否について検討されてみてはいかがでしょうか?
最後に…
投資はやはり自己責任になりますので、様々な情報に対して自分で納得した上で行動する前提で臨む姿勢が必要であると思います。(上手くいかなかった時に誰かのせいにしてもお金が戻ってくることはありませんので。。。)
金融リテラシーをあげて豊かな人生を歩んでいきましょう!!
投資はあくまでも自己責任!
自分自身が納得した上で行動を!