米国市場には様々な優秀なETFが存在し、実際に購入されている方が多いと思います。
米国ETFにはキャピタルゲイン(*1)を最大限に得るために高トータルリターンを狙えるS&P500のような株価指数に連動して運用されるインデックスファンドや、インカムゲイン(*2)を得るために高配当銘柄だけを集めて運用されるアクティブファンドなど数多くの特徴を持ったETFが存在します。
投資を行う上での目標に対して投資目的を決定して数多くの銘柄から自分にあった物を選ぶ事になりますが、
『どのような銘柄を選べば良いか分からない』、『ポートフォリオ(*3)を作れと言われてもどのように考えれば良いのか分からない』
など悩みを持たれている方がいらっしゃると思います。
この記事では米国ETFを用いた高配当株投資での資産運用を考えられている方に対して「ポートフォリオの作成方法」の解説を行っていきます。
こんな方に読んでいただきたい
- 米国ETFで高配当株投資を行いたい
- 米国ETFで高配当株ポートポートフォリオを作成したい
- でもどの銘柄を選べば良いか分からない
(*1) キャピタルゲイン:株式や債券など、保有している資産を売却することによって得られる売買差益のこと
(*2) インカムゲイン:資産を保有していることで得られる収入のこと。債券投資や預金などから生じる受取利子、信託の結果としての収益分配金、株式投資の場合の現金配当などの総称。
(*3) ポートフォリオ:金融商品の組み合わせのことで、特に具体的な運用商品の詳細な組み合わせを指します。
目次
投資目的を考えよう
米国ETFに関わらず、本格的に金融商品を購入する際には投資目的を明確にすることが必要であると考えています。ここが非常に重要であり投資目的によって何を購入するのかが変わります。
例えば
- 「老後の資金を作るためにある時点までに長期的なキャピタルゲインを得て資産形成したい」
⇨株価指数に連動したインデックスファンドを購入 - 「老後に定期的なインカムゲインを得るために今から源泉を育てておきたい」
⇨高配銘柄を集めた高配当アクティブファンドを購入
といったように目的によって購入すべき商品が変わってくるため、「投資目的を決めておくという事」が非常に重要になるわけです。
その商品を購入し資産運用することに対して自分自身が信じられるか?という事が本格的に投資を行う前に必要であるという事です。
また、その商品のリスクについて理解し「最悪の場合に自分たちが耐えられるのか?」と自問した際に「問題ない」と言い切れるのか?というところも重要となります。
仮に誰かの勧めで購入していた株価が暴落した時にその誰かが損失を補填してくれるような事はなく、儲かっても損をしても全て自己責任であるということを忘れてはいけません。
- 本格的に投資を始める際にはまず「投資目的を定める」こと
- 自分が選ぶ投資手法を信じられるか自問すること
- 投資する商品のリスクを理解し最悪の場合を想定し耐えられるか自問すること
我が家の投資目的の設定の方法については下記の記事で解説していますので、興味のある方は参照してください!
投資スタイルの決定
自分の投資目的が設定できたところでそれにあった投資スタイルを確認していきます。投資目的と投資スタイルが合わないと自分が思い描いた結果が出ない可能性がありますのでここも非常に重要な工程となります。
それでは投資スタイルの種類について解説していきます。
なお、この記事では長期的な資産形成というのを前提に置いて解説しておりますので、長期目線の投資スタイルについてのみ解説を行います。
投資スタイルの種類
長期目線の投資スタイルでよく候補に上がるのが「インデックス投資」と「高配当株投資」の2つとなります。この二つに関してはどちらが良いか??ということでよく議論になりますが、良い悪いという議論にあまり意味はないと個人的に思っています。
どちらを選択するかはあくまでも個人の好みや投資目的次第で優劣があるわけではない、そう考えます。
少し話がそれましたが、米国ETFを用いた長期投資における投資スタイルには大きく分けて下記の3種類があると考えており、それぞれの特徴は下記の通りです。
- 「インデックス投資」
⇨株価指数に連動したインデックスファンドに投資する手法
- 「高配当株投資」
⇨高配銘柄を集めた高配当アクティブファンドに投資する手法
- 「ハイブリッド投資」
⇨インデックス投資と高配当株投資を組み合わせた投資手法
3つ目に聞きなれない「ハイブリッド」投資手法があると思いますが、私が勝手に命名しましたが、これは「インデックス投資」と「高配当株投資」を組み合わせた投資手法です。
長期的にキャピタルゲインは得つつ、インカムゲインも合わせて享受する目的の方にはこちらの投資方法も選択肢に入ってくると思います。
ただしこの投資手法についてはインデックスファンドと高配当株式を運用するアクティブファンドの最低2種類以上のファンドを購入していく必要があり、投資額に余裕がある方でないと両方の旨味を引き出せないという懸念があります。
また、インデックス投資と高配当株投資は投資に対する考え方が異なるため、必要とされる投資に関する知識も片方の手法だけを行うのに比べて多くなります。
ですので、基本的には「インデックス投資」を選択する方が良いと考えます。それぞれの投資手法を難易度順にすると下記のようになる考えています。
特に初心者の方は「インデックス投資」を選ぶのが無難ではないかと考えています。
投資スタイル
- 「インデックス投資」
⇨株価指数に連動したインデックスファンドに投資する手法 - 「高配当株投資」
⇨高配銘柄を集めた高配当アクティブファンドに投資する手法 - 「ハイブリッド投資」
⇨インデックス投資と高配当株投資を組み合わせた投資手法
投資手法の難易度
- ハイブリッド投資 (かなり難しい)
- 高配当株投資 (難しい)
- インデックス投資 (比較的簡単)
初心者は「インデックス投資」一択!
投資スタイルの決定
上記の中で自分の投資目的にあったスタイルを選んでいく形となります。
- キャピタルゲイン狙いの方は「インデックス投資」
- インカムゲイン狙いの方は「高配当株投資」
- 両方に分散させたい方は「ハイブリッド投資」
投資スタイルは投資目的にあった物を選んでいく必要があります。前述の通りキャピタルゲインを得たい場合は「インデックス投資」、インカムゲインを得たい場合は「高配当株投資」を選ぶこととなります。
インデックス投資、高配当株投資に関しては詳しくは別記事でまとめています。またネット上にもあらゆる情報がありますので情報を吟味して自分にあった方の投資手法を設定する事が大切です。
この記事では「高配当株投資」によって将来的なインカムゲインを得る事を選択した上でのポートフォリオの作成方法について解説を行っていきます。
米国ETFの紹介
投資スタイルが決まったところでポートフォリオを作成するにあたって銘柄の選定を行なっていきます。
まずはじめに米国ETFの銘柄を紹介していきます。
高配当株投資向け 米国株ETF
まずは高配当株投資に向いているETF銘柄(VYM、SPYD、HDV)を紹介していきます。
基本情報
配当利回りが3%〜7%の高配当が期待できる銘柄で、5年配当率も5%以上あり中期的にも増配を続けてきているファンドばかりです。
また、配当金に隠れがちですが、5年トータルリターンを見ると4%〜5%のトータルリターンを記録しておりインデックスファンドには劣るもののキャピタルゲインを得ることも可能です。
セクター比率の比較
続いてセクター比率のグラフを並べて確認していきます。
これらの銘柄の詳細については下記の記事で詳しく解説していますので、興味のある方は参照してください。
自分ポートフォリオの作成

それでは米国ETFでポートフォリオを作成していきます。
前述の通り米国ETFには様々な種類の銘柄があり、それぞれ特徴を持っています。
インデックス投資に関しては個別のETFで銘柄、セクターの分散や将来的なトータルリターンが期待できるものが多く、個別のETF銘柄でポートフォリオを構築するのに十分であると考えますが、高配当株ETFに関してはその考え方は通用しないと考えています。
その理由についても合わせて解説していきます。
単独運用
高配当株投資(インカムゲイン狙い)で投資を行っていく銘柄を下記の中から選んでいきます。

VYM??
VYMに関しては銘柄数も400程度あり、セクターの偏りも比較的少なく、非常にバランスの取れた高配当株ファンドと言えると思います。
一見単独での運用も問題ないのではないか?と感じますが、高配当株の特性を考えると単独での運用はやめておいたほうが良いのではないかと考えます。
運用会社であるバンガード社のホームページでは下記のように記載されています。

『FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス』とは米国株式市場における配当利回りが上位の銘柄で構成され、REITは除外されている指数となります。
VYMは文字通り高配当株の集まりとなりますので、成長株/非成長株という考え方からすると非成長株に偏ったファンドということになると思います。
そういう意味でVYM一本でのポートフォリオは分散という点でも不安が残ります。
SPYD??
SPYDに関してはセクター比率は意外と分散が効いているものの、銘柄数が少ないという事から単独での運用には向いていないと言えます。
また、SPYDは『S&P 500 High Dividend Index』に連動して運用されていますが、この指標に関してはダウジョーンズのホームページでは下記のように記載されています。


要するに、
「S&P 500銘柄の中から不動産(REIT)も含む高配当銘柄上位80銘柄が選ばれており、それらを均等加重配分して構成されている」
という事です。
SPYDはこの指数に連動しているのでVYM同様、当然高配当銘柄に偏重している事となりますので、成長株/非成長株という考え方からすると非成長株に偏ったファンドということになると思います。
そういう意味でVYM同様、この銘柄一本でのポートフォリオという意味では分散という意味でも不安が残ります。
HDV??
HDVに関しては銘柄数が少ないという事とセクター比率も特定のセクターに偏っている事から単独での運用には向いていないと言えます。
下記はHDVのファクトシートの抜粋ですがHDVは『モーニングスター配当フォーカス指数』に連動した運用を行っています。
『モーニングスター配当フォーカス指数』は、Morningstarが公表する指数で、財務の健全性が高く、持続的に平均以上の配当を支払うことのできる米国企業75銘柄で構成され、REITは除外されています。
この点はVYMやSPYDとは異なる部分であり、配当の継続性については最も信頼性が高いと言えます。
しかし、セクターの偏りと成長株/非成長株という考え方からすると非成長株に偏ったファンドということになると思いますので、単独での運用には向いていないと言えると考えます。
- VYM/SPYD/HDV
どの銘柄も当然高配当銘柄に偏重している
基本的に単独での運用はオススメしない。
組み合わせ
ここまできたら高配当株ETFでのポートフォリオの作成についてはちょっと難しいのではないか??と感じる方も多いと思いますが、組み合わせた場合にどのようになるのか??という視点で組み合わせを見ていきたいと思います。
VYM + SPYD ??
VYMとSPYDのセクター比率の分布は下記の通りです。
VYMとSPYDは構成セクターの分布がかなり異なるので弱点部分を補うには良い組み合わせとなります。

これを保有額を1:1ので組み合わせた場合、下記のようになります。
苦手なセクターを補い合ってバランスのとれた形となっています。

セクターの分散はこれでかなりできて良いバランスと思いますが、高配当銘柄で構成されていることは念頭に置いておかなければいけません。
SPYD + HDV ??
SPYDとHDVのセクター比率の分布は下記の通り。
SPYDとHDVの相性の良さについては語られていますが、実際どのようなセクター比率になるのか見ていきます。

これを保有額を1:1ので組み合わせた場合、下記のようになります。
こう見るとエネルギーセクターの割合が大きくなりすぎてあまりバランスの取れた組み合わせではなくなってきているのかもしれません。
2020年5月12日のSPYDの組み替えでエネルギーセクターの比率が大きくなっている影響が出ているものと思います。

SPYDや HDVは頻繁に組入銘柄の変更が発生しており、セクター比率に関してもこまめにチェックしていく必要があるということがわかります。
結論
高配当株投資(インカムゲイン狙い)のポートフォリオについて検討を行ってきましたが、結論としては
「高配当株ETFのみでポートフォリオを作成することはオススメできない」
ということです。
前の項目でも申し上げた通り、前提として「高配当株ETFが基本的に非成長株の集まりである」ということからいくら銘柄やセクターの分散がされていたとしても、成長株/非成長株という視点から考えると非成長株に偏重しているということです。
高配当株でインカムゲインを狙うこと自体は投資方法として正しい選択であると思いますが、高配当株だけでのポートフォリオは偏った投資方法であるということは頭に入れて置いたほうが良いのではないか?と思います。
ということでインデックス投資をメインとして高配当銘柄も絡めていくというのが、インカムゲインを取得したい方にとっての解決策の一つになるのでは?と考えます。
高配当銘柄だけでのポートフォリオはオススメできない
インデックス投資との併用が一つの解決策に!?
まとめ

この記事では「米国ETFで高配当株ポートフォリオを作成する方法」について解説してきましたが、結論としては「高配当株のみでポートフォリオを作成することはあまりオススメできない」という結論に至りました。
これについては高配当株の特性を考えた場合の私なりの結論ですのであくまでも一つの意見として参考にしていただければと思います。
基本的にはインデックス投資と併用することでインカムゲインも狙った投資が可能となると考えておりますので、こちらについては別途「米国ETFで自分ポートフォリオを作成する方法 〜ハイブリッド投資編〜」で解説していきたいと思いますので、投稿までしばらくお待ちいただければと思います。
また、米国ETFでインデックス投資用のポートフォリオを作成する過程については「米国ETFで自分ポートフォリオを作成する方法 〜インデックス投資編〜」で解説しておりますので興味のある方は是非ご覧ください!
最後に…
投資はやはり自己責任になりますので、様々な情報に対して自分で納得した上で行動する前提で臨む姿勢が必要であると思います。(上手くいかなかった時に誰かのせいにしてもお金が戻ってくることはありませんので。。。)
金融リテラシーをあげて豊かな人生を歩んでいきましょう!!
投資はあくまでも自己責任!
自分自身が納得した上で行動を!