ETFとは株式市場に上場している投資信託のことで、上場投資信託と呼ばれます。米国ETFとは米国の株式市場に上場している上場投資信託の事を指します。
ETFは数十から数千の企業の株式から構成されているため分散が効いた非常に良い商品ですが、この記事では現在人気の米国ETFに対してそれぞれどのような特徴があるか解説し、特徴の比較を行っていきます。
こんな方に読んでいただきたい
- 米国ETFの特徴を知りたい!
- 米国ETFを比較したい!
- 米国ETFでポートポートフォリオを作成したい!
今回はVTI/VOO/QQQ/VIGといった長期的なキャピタルゲインを得る事を目的とした米国ETFを対象として8月20日の最新のデータを使用して比較を行っていきます。
今まで見られなかった素顔が見えてくるかもしれません。
*キャピタルゲイン:株式や債券など、保有している資産を売却することによって得られる売買差益のこと
各米国ETFの特徴
それではまずはじめにVOO/VTI/VIG/QQQ各ETFに関して一つ一つ特徴を解説していきます。
VOOの特徴
VOOの特徴を見ていきます。
VOOの基本情報
まずVOOは言わずと知れた「S&P500」をインデックスに追従する形で運用されるETFとなります。
VTIが中小企業を含んでいるのに対してVOOは大企業のみが含まれ、より成長性の高い大企業に集中して投資が可能な商品となります。
それでも500もの企業に一括して投資できているためそれだけでも分散投資できていると言えます。
また、運用総額が大きい事もあり信託報酬は0.03%と非常に割安となっていますので、非常に購入し易い商品と言えます。
1年トータルリターンも17.64%という事で暴落の影響を受けながらも回復してきていることが伺えます。
下記は VOOの年初来のチャートですが、つい先週に最高値を更新し、コロナ暴落の影響を全て打ち消すような上昇を見せています。
VOOのセクター比率
下記がVOOのセクター比率になります。
6月末のデータからの差分はほとんどなく、トップ3の顔ぶれも変わっていない状況です。
VOOのセクター比率をレーダーチャートで示すと下記の通りとなります。
このETFだけでも幅広く分散されており、一つだけでも立派なポートフォリオとなる優れたETFであると言えます。
組入銘柄上位10社
下記がVOOの構成銘柄上位10社となります。
赤くハイライトしているのがいわゆるGAFAMとなりますが、GAFAMだけで全体の約28%の割合を占めている形となります。
VOO: S&P500に連動して運用される
信託報酬が0.03%と割安
高いトータルリターン
年初来最高値を更新
- セクター比率上位3セクター
情報技術/ヘルスケア/一般消費財 - GAFAM比率
28%
VTIの特徴
それではまずVTIの特徴から見ていきましょう。
VTIの基本情報
VTIの特徴としてに始めに挙げられるのはやはり「銘柄数」となります。
VTIはS&P500も含めた全米の大企業、中小企業約3500社に分散して投資が可能でこれだけでも分散投資ができる代物です。
VOOとの大きな違いはこの部分であり、大企業中心に投資ができるVOOに対して中小企業(成長株)に投資できるのがVTIということになります。
また、設定年が2001年という事で「ITバブル(2002年)」や「リーマンショック(2008年)」といった大きな暴落を経験した上で成長し続けている点も挙げられます。
運用総額が大きい事にもより信託手数料も0.03%と非常にが安く一株単価も比較的安い事から非常に投資し易い銘柄と言えます。
年初からの株価の推移を見てみても現状はS&P 500に匹敵する成績を収めています(緑色がVOOで赤色がVTI)
VTIのセクター比率
VTIのセクター比率は下記の通りとなっています。
前月まで3位だった金融の構成比率が落ち、生活必需品の割合が増えて3位が入れ替わっています。
VTIのセクター比率をレーダーチャートで示すと下記の通りとなります。
VOO同様、このETFだけでも幅広く分散されており、一つだけでも立派なポートフォリオとなる優れたETFであると言えます。
組入銘柄上位10社
下記がVTIの構成銘柄上位10社となります。
赤くハイライトしているのがいわゆるGAFAMとなりますが、GAFAMだけで全体の約23%の割合を占めている形となります。
VOOのGAFAMの組入比率が約28%ですからVOOに比べるとGAFAMの組入比率が若干小さくなっています。
これはVTIの方が銘柄数が格段に大きいため、自ずと全体に対するGAFAMの構成比率も下がっているということであると思われます。
VTI: S&P500を含む全米の3500社への分散投資が可能
「ITバブル」、「リーマンショック」を乗り越えている
信託報酬が0.03%と割安
高いトータルリターン
- セクター比率上位3セクター
情報技術/ヘルスケア/生活必需品 - GAFAM比率
23%
VIGの特徴
VIGの特徴を見ていきます。
VIGの基本情報
VIGの特徴としてまず始めに挙げられるのが「連続増配株」で構成されている点です。VIGの組み入れ銘柄の組み入れ条件として10年以上の連続増配があり、数千ある米国株式の中からただ増配を続けているだけではなく、増配の可能性が低い銘柄は排除されています。
構成銘柄が「資本財」や「生活必需品」の比率が40%程度となっており、暴落時の下げ幅が少ないことも特徴に挙げられます。実際に今回の暴落においても、暴落時の下げ幅が小さく、回復も早いという特徴を持っています。(緑色がVOOで赤色がVTIで水色がVIG)
しかし、直近ではVTI/VOOに対して若干株価上昇の勢いが落ちており、この点については7月時の組み入れセクター割合の変化によるものと思われますが今後も注視して行く必要がありそうです。
VIGのセクター比率
VIGのセクター比率は下記の通りです。
VIGのセクター比率をレーダーチャートで示すと下記の通りとなります。
ただし分散効果としての特徴としてはあまり変わっておらず、依然としてディフェンス力が強いETFと言えると思います。
組入銘柄上位10社
下記がVIGの構成銘柄上位10社となります。
赤くハイライトしているのがいわゆるGAFAMとなりますが、GAFAMだけで全体の約5%と非常に低くなっています。これについてはVIGのファンドの組入条件によりMicrosoftしか入っていない状況となっています。2年後からはAppleが追加となる可能性が高いので期待したいと思います。
VIG: 10年以上の連続増配株で構成される
「ITバブル」、「リーマンショック」を乗り越えている
信託報酬が0.06%と割安
コロナショックでの下げ幅が小さい
- セクター比率上位3セクター
生活必需品/情報技術/資本財 - GAFAM比率
5%
QQQの特徴
QQQの特徴を見ていきます。
QQQの基本情報
QQQの特徴としてまず挙げられるのがNASDAQ 100に連動した運用がされていると言う事です。NASDAQ 100は米国の中でもハイテク株(情報技術/電気通信)を中心とした中小企業やハイテク産業など主にベンチャー向けの新興市場となります。
ファンドのセクター比率も情報技術/電気通信だけで65%を占めておりハイテク株に特化したETFであると言えます。
また設定年も1999年と「ITバブル(2002年)」や「リーマンショック(2008年)」を乗り越えているところも良い特徴として挙げられます。
しかし、その他のETFに比べると信託報酬が0.20%とやや割高となっていることと、一株あたりの単価が若干高めな部分があり、この点は運用していく上でネガティブな要素となります。
そして、QQQにおける最も素晴らしい点はトータルリターンの高さです。
5年トータルリターンで19.21%の成績を収めており、この間保有していた人はさぞ大きな利益を得ることができたでしょう。。。
また、コロナショック前までは「ハイテク株は暴落に弱い!」と言われていましたが、結果は全く逆。このコロナショックにおいてQQQは唯一の勝ち組と呼んでも良い成績を収めています。1年トータルリターンでQQQは31.65%という成績を収めていおり、他を圧倒しています。。
2020年始めからのVOOとQQQのチャートを比較してみると下記の通りとなります。(緑色がVOO、赤色がVTI、水色がVIG、橙色がQQQ)
見ての通りその他の銘柄を完全に置いて行っており、暴落があったにも関わらず年初来高値を更新しています。
QQQについては8月頭から下落傾向が続いており動向が危ぶまれていましたが、現状は再度上昇傾向に戻っています。
今後このハイテクの動きがどのようになっていくか?というところについては正直読めませんが、少なくとも金利が下がるとハイテク株の株価が上昇する。という傾向があるため、短期的には金利の動向を確認していく必要があると思います。
QQQのセクター比率
QQQのセクター比率は下記の通りです。
前月比較しても特に変化はない状況です。
QQQのセクター比率をレーダーチャートで示すと下記の通りとなります。
情報技術、電気通信に特化したまさにハイテク特化型のETFと言えます。
組入銘柄上位10社
下記がQQQの構成銘柄上位10社となります。
赤くハイライトしているのがいわゆるGAFAMとなりますが、GAFAMだけで全体の約48%と非常に高くなっています。
これはQQQの一番の特徴ともいえ、GAFAMの成長をそのまま享受できるような構成になっています。また、直近で株価成長が好調なTeslaやNVIDIAなどの銘柄が入っていることも特徴の一つとして挙げられます。
QQQ: NASDAQ 100に連動して運用される
「ITバブル」、「リーマンショック」を乗り越えている
圧倒的なトータルリターン
年初来最高値を更新中
信託報酬が他のETFと比べると0.20%と若干高め
- セクター比率上位3セクター
情報技術/電気通信/生活必需品 - GAFAM比率
48%
VOO/VTI/VIG/QQQの特徴比較
前の項目まででそれぞれのETFの特徴について紹介してきました。
この項では各ETFの特徴の違いについて比較を行っていきます。
各銘柄の特徴のおさらい
基本情報の比較
組入銘柄上位10社
横に並べてみるとそれぞれの特徴の違いがよくわかりますね!
もっと分かりやすくするためにそれぞれの項目に対して◎/○/△/×に識別していきます。分け方は下記の通りです。
◎:非常に優れている
○:優れている
△:まあまあ
×:あまり良くない
この識別は筆者の独断と偏見て決めているので、参考程度で見ていただけると助かります!
上記をみるとそれぞれの銘柄の特徴がかなり見えてきますね。
私の印象をまとめると下記の通りです。
各銘柄の特徴
- VOO
言わずと知れたS&P500のインデックスファンド
○ 信託報酬が割安
○ 銘柄の分散が効いている
○ 暴落の経験が今回のコロナショックのみであるが、S&P500自体が幾多の暴落を経験しつつも成長し続けている実績から
△ 一株単価が高い
○ 長期的に高いトータルリターンが期待できる
○ GAFAM構成比率が28%と高い
- VTI
S&P500も含めた3500に投資できるインデックスファンド
○ 信託報酬が割安
◎ 一番銘柄の分散が効いている
○ 「ITバブル」「リーマンショック」を乗り越えている
○ 一株単価が安い
○ 長期的に高いトータルリターンが期待できる
○ GAFAM構成比率が23%と高い - VIG
連続増配株で構成されたファンド
○ 信託報酬が割安
○ 銘柄の分散が効いている
○ 「リーマンショック」を乗り越えている
○ 一株単価が比較的安いのが魅力
○ 長期的に高いトータルリターンが期待できる
○ コロナショックでは暴落の影響が比較的小さかった
△ 直近の成績でVOO/VTIに若干差をつけられている
△ GAFAMの構成比率が5%とその他のETFと比べると低い
*ただし2年後にはAppleの組入の可能性が高い - QQQ
NASDAQ 100に連動するインデックスファンド
△ 信託報酬が比較的高い
○ 銘柄の分散が効いている
○ 「ITバブル」「リーマンショック」を乗り越えている
△ 一株単価が高い
◎ トータルリターンは他のETFを寄せ付けない
◎ コロナショックでは暴落の影響が小さく勝ち組と言える
◎ GAFAM構成比率が48%と非常に高い
セクター比率の比較
続いてセクター比率のグラフを並べて確認していきます。
このグラフをみるとそれぞれの銘柄の特徴が見えてきます。
下記は景気循環に対するセクターローテーションについて追記したチャートになりますが、上記のレーダーチャートと比べてみるとVOOとVTIは上位3セクターが順位は異なるものの景気循環に対するセクター分布がある程度散らばっており各ETF単体でもセクター分散がされていることが分かります。
VOOとVTIに対してVIGとQQQに関しては独自の特徴が示されていることが分かります。
VIGは「生活必需品」、「資本材」といった暴落相場でも比較的影響を受けにくいセクターを含む形状となっており、暴落相場での底堅さが伺えます。実際に今回の暴落相場でも小さい下げ幅で推移できた事の裏付けですね。
QQQは「情報技術」、「電気通信」のセクターが尖っておりまさに『ハイテク特化型』ともいうべき形状をしています。まさに「バランス関係無し!攻撃のみ!」という印象です。このバランスを欠いた形状から暴落相場では弱いと言われ続けていましたが、蓋を開けてみればこのコロナショックによる暴落相場でまさに一人勝ちの状況となっています。
一つ言えることはETFといっても一つの銘柄だけでは全てのセクターに分散して投資できる訳ではないということです。
必要に応じて複数のETFを組み合わせるなど、さらなるセクターの分散についても検討する余地があるのではないかと思います。
また、各ETFの組み合わせ表についても下記からダウンロード可能ですので興味のある方はぜひ!!
まとめ
今回はGAFAMの組入比率という新たな要素も加えて比較を行ってみました。
記事内ではポジティブな情報として扱っていますが、GAFAMに投資をすることが正しいと言いたいわけではありません。
あくまでも現状を考えると市場を牽引しているGAFAMに投資していくことが資産を効率的に増やしていく方法の一つであると考えています。
そういった前提で比較の結果ではQQQの強みがものすごく出ている結果となっていますが、QQQはやはりセクター比率が偏り過ぎていることは気になります。
その他のETFと組み合わせるなど、セクター分布の調整が必要になってくると思います。
個人的には長期的に投資することを考えると銘柄やセクターの分散が効いていた方が良いと考えているので、そういう意味だと一株単価の安く、銘柄数の多いVTIが上位に上がってくると感じていますし、
連続増配に魅力を感じる方はVIGを選択するのも一つの解となるのでは?と思います。
いずれにしてもどのETFも非常に優秀な銘柄ですのでどれを選んでも良いと考えますが、最終的には人それぞれの考えや好みによるということとなると思います。
あとはETFを組み合わせることで各々の理想のポートフォリオを作成することも可能です!
この記事が銘柄選びの一つの助けとなれば幸いです!
最後に…
投資はやはり自己責任になりますので、様々な情報に対して自分で納得した上で行動する前提で臨む姿勢が必要であると思います。(上手くいかなかった時に誰かのせいにしてもお金が戻ってくることはありませんので。。。)
金融リテラシーをあげて豊かな人生を歩んでいきましょう!!
投資はあくまでも自己責任!
自分自身が納得した上で行動を!